この話は作り話です。


(19才、女性、短大生)

2月14日
バレンタインデー
私には好きな人はいる。
片思いっていうことかな・・。

でも、チョコをあげる理由がよくわからない。
はたして
男の人ってチョコをもらってうれしいものなんだろうか・・・。
そこらへんがいまいちわからない。

友達に聞いても
「あんまり考えたことない。」
「だって、バレンタインデーに好きな人にチョコあげるのって
当たり前じゃない?」
「お歳暮とかお中元みたいなもんじゃないの?」
という返事がほとんどだった。

実際にチョコを買いに行っても
気乗りがしないから買わなかった。
というか
買えなかった・・・。

バレンタインデー当日
バイト先の店長
私より10歳くらい年上の女性なんだけど
バイト中に
何気なくそういう会話になっていった。
休憩の時にもうちょい話そうと言ってくれた。

休憩時間
店長は缶コーヒーを二つ持って
一つは何も言わずに私の前に置き
もう一つはあけて一口飲んだ。

「で、何だっけ?バレンタインデーだっけ?」
「はい・・。」
「その前に一つ聞いていい?」
「はい。」
「何でお歳暮って贈るんだと思ってる?」

考えたけどよくわからなかった。
そのことを店長は察知したみたい。
「私はね、お世話になった人にしか贈らないよ。」
「お世話になった人・・・ですか?」
「そう、今年一年ありがとうございましたって
そういう気持ちを込めて贈ってる。
気持ちは伝わってると思うのね。
何でもかんでも義理とかで贈る時代は終わってきているけど
ありがとうっていう気持ちはいつになっても変わらないと思う。」
「はい。」
「そこと一緒じゃないかな・・・
バレンタインデーもあげたいからあげる。
好きな人が私の持っていったチョコを
喜んでくれれば、うれしいでしょ。」
「はい・・・。」
「私から言ってもわからないかな?」
と言って周りを見渡した後
「おっ、ちょうどいいところに・・・佐藤君、こっちきて。」
「はい、なんですか?」
佐藤さんは店長見習いみたいな人で
店長の二つ下くらい歳の人だ。

「佐藤君はチョコもらってうれしい?」
「うれしいですよ。」
「どうして?甘いもの好きなの?」
「いや、そりゃね、お酒とかもらったほうがうれしいですよ。
でも、チョコに込められてる思いというか
わざわざ買いに行ってくれたわけですよね。
それがすごくうれしいじゃないですか。」

そういうことなんだ。
大事なのはチョコじゃなくて
そこに込められてる思いなんだ。

「わかった?」
店長は私に対して一言そう言った。
「はい、何となくですが・・・。」
「何となくなの?佐藤君の説明が悪いからだよ。」
「おれのせいですか?それって。」
「そうだよ、このままこの子が誰にもチョコをあげられなくなったら
佐藤君の責任だからね。」
「店長、ひどい・・。」

この後、二人は笑いながらお店に戻った。
何か仲が良すぎる。
ま、いいや。

今日、バイトの帰りにチョコを買った。
好きな人にあげれば・・・
それで喜んでくれたら・・・
確かにすごくうれしいかもしれない。

「ただいま〜。」
「おかえり〜。」
「はい、お母さん、チョコレート。」
「・・・へ?」
「好きな人にチョコあげる日でしょ?今日は。」
「そ、そう?・・・あ、ありがとね。」
喜んでくれたのはうれしいけど
何も泣くことはないじゃない。


何でだかよくわからないけど
買ってきたチョコをお母さんと二人で食べました。



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